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序:微生物から人生を見つめ直すということ

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『発酵道』は、千葉県香取郡にある酒蔵「寺田本家」二十三代目当主、寺田啓佐氏が綴った本だ。
ぬか床が食材を腐らせず、むしろ旨味へと変えていく現象をヒントに、
人間の身体、心、そして生き方そのものを**「発酵」と「腐敗」**という視点から見直していく。

発酵は、ただの食品の変化ではない。
それは、**「いのちが育ち、調和していく方向性」**のことだと、著者は言う。

そしてその気づきは、決して平穏な中で訪れたわけではなかった。


腐敗へと傾いた人生からすべてが始まった

啓佐氏はかつて、利益だけを追う酒造りをしていた。
原材料を極限まで削り、品質を落としても売れればいいと考え、
好きな物を好きなように食べ、1日50本のタバコを吸う生活。

経営不振、過度なストレス、そして痔瘻の手術
そのとき初めて、腸が“腐っている”と医者に告げられた。

その身体の状態は、まるで精神と経営の有り様を映し出していたかのようだった。

そこから、すべてが変わり始める。
腐敗から発酵へ。
奪う人生から、育てる人生へ。


「いかに儲けるか」を捨てたとき、発酵が始まった

手術をきっかけに、著者は**「本物の酒造り」**に戻ることを決める。

私利私欲を捨て、人の役に立つ酒を造る。

この言葉が、蔵の精神の中心になった。

体が回復するにつれ、精神もまた澄み渡っていく。
身体と心は分かれているのではなく、同じ方向へと変化していくのだと知る。

発酵とは、生命のリズムに調和して生きることであり、
腐敗とは、自我や欲望に支配され、濁っていくことだ。


微生物の世界は「弱肉強食」ではない

興味深いのは、発酵が進む現場では、微生物同士が争わないということだ。
そこには相互共助、共生のリズムがある。

社会もまた、弱肉強食の競争が当たり前のように語られている。
「奪った者勝ち」「先に出た者が勝つ」という価値観は、
社会的な腐敗を生んできた。

いじめ、暴力、犯罪……
それらは精神の腐敗の延長線上にある。

と著者は言う。

だが、発酵は教えてくれる。
共に生き、育ち合う方向が、本来の生命の在り方であると。


コロナと「極端な潔癖社会」への警鐘

本書は、菌に対して過剰に恐れを抱く現代に警鐘を鳴らす。
菌は敵ではない。
むしろ、人間は菌と共に生きている。

腸内環境が整うと、心も落ち着く。
「腸活」が精神にも作用することを、多くの人が経験的に知り始めた今、
本書の言葉はより深く響いてくる。


人生は「腐る」か「発酵する」か

この本を読んでいると、内容が極端に見える瞬間がある。
だが、それこそが気づきの扉だった。

「そうは言っても、嫌な人は嫌いだし、理不尽には腹が立つ」
そう思う自分がうごめいているのがわかる。

それは、**自分自身に染み付いた“腐敗の声”**だ。

発酵とは、戦い続けながら育っていくものなのだ。


読み終えて:光と闇が同時に照らされる一冊

この本は、人生観が静かに、しかし確実に変わる一冊だった。

読むほどに光が差す。
しかしそれと同時に、影が浮かび上がる。

発酵は「自分の闇を否定すること」ではなく、
闇の存在を知ったうえで、光へと向かって調和していく営みなのだ。


書評まとめ

項目 内容
書名 発酵道
著者 寺田啓佐
出版社 河出書房新社
難易度 ★★★☆☆(思想は深いが語りは平易)
おすすめ度 心と体と生き方を整えたい人へ
一言感想 「腐敗から発酵へ」人生を反転させる考え方の書。

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